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『宝石商リチャード氏の謎鑑定』

辻村七子さんのライト文芸ノベルが原作の『宝石商リチャード氏の謎鑑定』というアニメの最終回(かと思っていたらまだ続きがあったんですね、すみません)を先程視聴しました(以下ネタバレがありますので、ご注意下さい)。

リチャードさんという絶世の美男子にして宝石商のお兄さんと、そのリチャードさんに雇われているアルバイトの正義(せいぎ)君が、お店にやって来るお客さんがその宝石を欲しがる理由を紐解いていくという物語です。

ジャンル的にはミステリーとなっていますが、ミステリー要素はそれ程強くないので、「真相の意外性にびっくりするのが好き」という私みたいなタイプの方には、正直やや物足りない気がしますね。

それでもここまで視聴してきたのは、リチャードさんと正義君がくっ付くのかどうか確かめたかったからです(きっぱり)。

この二人、お互いへの好感度が妙に高い上に、正義君がしょっちゅうリチャードさんの容姿を「綺麗」と褒めそやすので(別に口説いているつもりは全くなく、女子が可愛い物を見た時に「可愛い」と言う感覚に近いのでしょうが)、BLは嗜み程度にしか読まない私でも「あー、BLっぽいなあ。リチャードさんは女性の恋人がいたこともあるし、正義君も仲良くしてる女の子がいるけど、くっ付くのかなあ?」と気になってしまい、二人の関係が最終的にどうなるのか確かめずにはいられませんでした(笑)。

結果、リチャードさんと正義君はカップルにはならないようですが、彼等はやっぱりソウルメイトと言うか、性的指向に関係なく大事にしたい、幸せでいて欲しいと思っている人同士なんだろうなと納得した次第です。

肩どころか頭のてっぺんまでBL腐海の海に浸かっている女子の方にとっては「そうじゃないだろ!」なオチかも知れませんが、むしろそこは妄想で補うのでノープロブレムなのでしょうか?

腐女子さんの思考回路はどうにも理解し切れないところがありますし、この辺の匙加減の好みは人によるところが大きい気もしますが、個人的にはこれはこれでいい関係性なのではと思います。





『虚構推理』

城平京さん原作の『虚構推理』というアニメを毎週楽しみに見ています。

この方、アニメにもなった『スパイラル~推理の絆~』という漫画の原作を手掛けていらしたので、以前から存じ上げていましたが、あの時はストーリーが進むにつれて、ミステリーのジャンルから離れた作風になっていった記憶がありますね。

『虚構推理』も「推理が真実かどうかは問題ではなく、相手をもっともらしい説明で納得させることが目的」だったりするので、ミステリーと呼んでいいのかよくわかりませんが、面白いです。

片目と片足を代償に怪異達の知恵の神となった琴子ちゃんという女の子と、不死身にして「未来を自分の望むものに決定できる」という力を持つ九郎さんというお兄さんの二人が怪異達から依頼を受けて、事件を解決していくという風変わりな物語なのですが、真相は毎回極めて単純なもので、前述の通り「人を納得させる説明をすること」が主な目的となっています。

まあ、様々なミステリー小説で探偵が披露する推理も、「もっともらしく聞こえるように、都合良く物語を組み立てているだけに過ぎない」と言われればその通りな気もしますし、解釈によって推理が二転三転するミステリーなんて、もう何が事実なのかよくわからないまま終わったりすることもありますしね。

私もミステリーを書いた経験があるので、探偵が推理を披露するシーンでは、私が考えた事実を彼等に語らせましたが、中には敢えて探偵に真相を語らせないなんて作家さんもいるのかも知れません。

その場合、偽りの真実を提示する限り、公言しなければそうとはわかりませんし、私達は知らず知らずの内に偽りの真相を知らされて納得しているということになりますね。

ミステリーにおいて、本当に事実を知っていると断言できるのは、作者ただ一人なのでしょうから。

『虚構推理』は、ついそんなことを考えてしまう物語だと思います。






『Twelve Y.O.』

先日、福井晴敏さんのデビュー作にして、第44回江戸川乱歩賞受賞作の『Twelve Y.O.』を読みました。

優秀なパイロットでありながら事故のトラウマで飛べなくなってしまい、仕事への情熱を失っていた自衛官募集員の平(たいら)さんというおじさんが、何年も会っていなかった知人と再会したことをきっかけに巨大な陰謀に巻き込まれていくというストーリーで、面白かったです。

米軍が沖縄から撤退することになり、そのきっかけを作ったのが『トゥエルブ』と名乗る謎めいた男性なのですが、話が大き過ぎて只の荒唐無稽な物語になってしまいそうなところを、この国の在り方や他国との関係などを上手く絡めて説得力ある仕上がりにしていたところが流石でした。

ジャンル的にはミステリーなのでしょうが、池井戸潤さんの『下町ロケット』のようなお仕事ものといった印象の方が強かったですね。

上からの命令に従うだけだったおじさん達が奮起して、自分の身が危なくなっても人を救おうとする姿が熱かったです。

特に、トラウマから飛べなくなっていた平さんが、人を救いたい一心で自らヘリを操縦し、再び空へ上がるシーンは感動的でした。

ほぼ丸腰に近い状態で敵を倒すため、素人でも難しいとわかる軌道でヘリを操って見せた平さん、凄くかっこ良かったです。

最後は悲しくも希望のあるエンディングでしたし、謎解きあり、アクションあり、人間ドラマありと、盛りだくさんな内容で、とても楽しめました。

福井晴敏さんの小説を読んだのは初めてだったのですが、他の作品も読んでみたいなと思います。