本絡みのミステリー
三上延さんの『ビブリア古書堂の事件手帖2 〜栞子さんと謎めく日常〜』。
ちなみに1巻は読んでませんが、上下巻になっている場合などを除いて、1冊の本の中で謎が解明されるので、途中から読んでも大して支障がないのがミステリーのいいところです。
1巻のネタバレはちょいちょいありましたが、私ってアニメ等の続きが気になると、Wikipediaさん等を平気で読む人なので、「ネタバレ上等!」の心意気で敢えて読みました。
内容をざっくり説明すると、本好きの『ビブリオ古書堂』店主の栞子さんと、そのお店で働く五浦さんというお兄さんが遭遇する本絡みの謎を描いた作品です。
今のところ栞子さんが怪我をさせられたりすることはあっても、殺人事件は起こっていないようなので、米澤穂信さん的な日常系ミステリーに分類して差し支えないと思いますね。
1つのエピソードが100ページ弱と短いため、そんな手の込んだ謎解きはなく、「そ、そうだったのかー!やられた!」と言うよりは「ああ、そっか。そうだよね、うん」という感じのあっさりした真相が毎回明らかになります。
本が絡むミステリーと言うと、野村美月さんの『文学少女』シリーズが真っ先に浮かびますが、文学作品に書かれている内容と同じようなことが起こったり、文学作品に強く影響を受けた人が出てくるとかいうことはないですね。
謎を解くに当たって重要な手掛かりになるのが、本に挟まっているスリップや値札だったりするので、本の内容と言うよりは本に関わる全てが謎解きの要素になっています。
毎回本の内容が実際の事件に重なる『文学少女』シリーズはちょっと都合良過ぎな感があったので、リアリティー面から言えばこちらの方が優れていると思いますが、全体的に薄味な感じなので、少々物足りなく感じてしまったり。
あと、本の虫という設定の割に、栞子さんの本への愛情が感じられないところがちょっと引っ掛かりますね。
『文学少女』シリーズの遠子さんは毎回本をむしゃむしゃ食べて、その本の良さを味に例えて表現するというインパクト大のキャラだったので、「この人以上の本好きなんてこの世に存在しないに違いない」と思わせてくれましたが、栞子さんは本の薀蓄は語っても本への情熱を語ることはあまりないので、「単に商売柄本に詳しい人」にしか見えないんです。
一応「引っ込み思案キャラながらも本に関係する話をする時だけは饒舌になる」という設定はあるにはあるのですが、物静かなキャラなのが災いしているのか、どうにも本への愛が伝わって来ないんですよね。
まあ、もしかしたら1巻を読めばもう少し印象も変わるのかも知れませんが。
ややご都合主義な感は否めないものの、本絡みの泣けるミステリーが読みたい方は『文学少女』シリーズが、もうちょっとリアリティーがあってさくさく読めるミステリーが読みたい方は、『ビブリオ古書堂の事件手帖』シリーズがオススメですよ。
ちなみに私は前者の方が好みですが。
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