久々のファンタジー
『剣の輪舞』という作品の六十年後の世界を描いた姉妹編だそうですが、そちらを読んでいなくても特に支障はありません(現に私は読んでいませんし)。
自分で書く時はファンタジーばかり書いている割に、小説を読む時はミステリーやSFが多く、ファンタジーはあまり読まないのですが、久々にファンタジー系の小説に手を出しました。
かつて北部と南部に分かれていたとある国が南部によって併合され、魔術師達を従えて人々を統治していた王は貴族達に廃されて、貴族達が国を統治しているのですが、現在魔術師はおらず、彼等が使っていたという魔術もでたらめだと思われている中、新進気鋭の歴史学者であるバージル・セント・クラウドさんは失われたと思われていた魔術書を手に入れたのを機に、魔術が本物であったことを確信して、それを公の場で証明しようとします。
そのバージルさんの恋人である、セロン・キャピオンさんという身分卑しからぬお兄さん(打ち間違いではなく、同性カップルです)が、魔術の知識を得て魔術師となったバージルさんに新たな王に選ばれ、次第に言動がおかしくなっていき……という物語なのですが、独特の世界観だけでなく、バージルさんとそのライバルであるクラブさんとの歴史研究の方法論の違いなどもしっかり書かれていて、なかなか読み応えがありましたね。
訳が淡々としていたせいか、登場人物にはあまり感情移入できなかったのですが、出会ったばかりの人とあっさりベッドを共にする人が妙に多くて、非常にアメリカ的な印象を受けました。
日本のドラマはあまり見ませんが、それ程濡れ場が出てくる印象はないのに、アメリカのドラマだと(まあ、ジャンルにもよりますが)そういうシーンが結構多い気がするのはお国柄というものでしょうか。
同性愛者・両性愛者のキャラが妙に多かったので、余計にアメリカっぽかったです。
日本のドラマでトランスジェンダー以外の性的マイノリティーの方が出てくるってかなり珍しいと思いますが(そのトランスジェンダーの方もよく見ると言う程出てくる訳ではないですし)、アメリカのドラマだと同性愛者・両性愛者・トランスジェンダーの方が結構頻繁に出てきますからね。
映画だと広く世界に売り出すことを意識しているためか、それ程見ない気がしますが。
台詞から察するに、やはりアメリカの人々に偏見がない訳ではないようですが、マイナーな性的嗜好の人達も社会の一員として存在していることが広く人々に認められている感があって、個人的には好感が持てます。
お兄さん同士のカップルが数組出てくるので、妄想逞しい女子にとっては大変おいしい感じの作品だと思いますが、オチがちょっと「えええええ、これで終わりなの!?」ながっかり感漂う感じなので、そこはある程度覚悟して読まれることをオススメします。
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