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イントゥルーダー

最近、高嶋哲夫さんの『イントゥルーダー』という小説を読みました。

タイトルの「イントゥルーダー」というのは「侵入者」という意味で、高名なコンピューター開発者の主人公が、ある日突然25年前に別れた恋人から息子がいること、そしてその息子が事故に遭って生死の境を彷徨っていることを知らされ、平穏な生活に侵入してきた「侵入者」である息子の事故について調べる内に事件に巻き込まれてゆくというストーリーなのですが、1999年にサントリーミステリー大賞及び読者賞を受賞した作品だけあって、なかなか面白かったです(以下ネタバレありますので、ご注意下さい)。


前述の通り主人公はコンピューターに詳しく、その息子さんも同様なので、コンピューターが物語の鍵を握っていたりするのですが、何分90年代の作品なので記録媒体がフロッピーディスクだったりして、「フロッピー!?今時の若者は聞いたことすらないんじゃないか!?」と思わずにはいられませんでした(笑)。

今やUSBメモリとかが当たり前の時代ですからねえ……。

90年代当時は最先端でも今見るとどうしても古臭い感じになってしまうのは否めませんが、私はコンピューターに詳しくない人なので、コンピューター関係の薀蓄はなかなか興味深かったですよ。

多分今日では通用しないことも多いのだろうと思いますが、事件の真相に原発が絡んでおり、東日本大震災後に読むと深く考えさせられる物語で、先見の明がある作家さんだなあと感心しました。

人間のやることに「絶対」はないので、よっぽどおめでたい人でもない限りは、誰もが心のどこかでいつかあんな日がくることを予感していた気がしますが、実際来てみると想像を超える被害でしたね……。

しかもまだ終わってないですし。

単純に考えて人間が管理している以上はリスクをゼロにするのは無理なので、制御が難しいものは極力使わないのがベターだとは思いますが、「科学技術は人間に災厄を齎すものでもあるが、科学が悪い訳ではなくて、金や権力に目が眩んで科学を正しく運用させない人間が悪い」というような台詞には一理あるなと思いました。

単純にミステリーとしても面白かったですが、人間と科学の関わり方や親子の絆といったものも上手く絡めながら書かれていて、人によって全く違う楽しみ方ができそうですね。

ちょっと古い作品ですが、オススメです。

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