また1つ萌えが減りました
最近やっとあさのあつこさんの『NO.6』の最終巻を読みました。
以下ネタバレを含みますので、ご注意下さい。
人間の愚かさや残酷さに真正面から立ち向かうという姿勢に最後までブレがなかった点は良かったですが、近未来ものっぽく始まった割にオチはファンタジーという展開には大いに面食らいました。
今にして思えば、物語の鍵を握るネズミさんなるお兄さんがネズミと会話できるという設定も伏線になっていたのだろうと思いますが、動物好きな人って特殊能力なぞなくとも普通に動物と会話しますし、これでファンタジー展開に持って行くことを予見できた方ってかなりの少数派だと思います。
近未来ものっぽく始まった以上、できれば近未来路線で話を纏めて頂きたかったです。
ファンタジックな存在を出した意図は理解できるのですけど、できるのですけどね……。
トンデモ展開と言うと些か語弊があるでしょうが、正直「えええええ! そんな展開なの!?」と思わずにはいられませんでした。
ファンタジー要素を入れるなら入れるで、もっとファンタジー要素を前面に出したストーリー展開だったら、また違った感想を抱くことができたと思うのですが。
「ファンタジーと見せかけて実はSF」だった藤崎竜さんの『封神演義』を読んだ時にも思いましたが、この手のストーリーパターンって作品にとってあまりプラスにはならない気がします。
少々批判的なことも書きましたが、諸悪の根源のNO.6はちゃんと変革されましたし、気になっていた紫苑さん(主人公)とネズミさんの関係は納得の行く形で書かれていましたし、満足のエンディングでした。
できれば二人で一緒に生きていくエンディングが見たかったとも思いますが、正反対な人達なので「打倒NO.6」のためには共闘できても、目的を達成した後に一緒にいることはやはりできないのでしょうね。
彼等が力を合わせてNO.6を変えるところを見られただけでも良しとしましょう。
新刊が出る度、敵同士になってもおかしくないような間柄の少年達の微妙な関係に萌え萌えすることがなくなるのだと思うとちょっと寂しいですが、だらだら続けて駄作にならないためにも終止符は必要ですよね。
シリーズ中読んでいて辛くなるようなシーンもありましたが、読後感は大変爽やかな作品でした。
あさの先生には心からお疲れ様と言いたいです。