忍者ブログ

『なつかしく謎めいて』

最近、『ゲド戦記』で有名なアーシュラ・K・ル=グウィンさんの『なつかしく謎めいて』という小説を読んでいます(以下ネタバレありますので、ご注意下さい)。

次元間を移動する方法が確立され、様々な次元を旅する女性を描いた短篇集なのですが、いろいろな次元に生きる人々の愚かさや気高さ、悲しさが描かれていて面白いですね。

個人的には『玉蜀黍の髪の女(ひと)』と『四つの悲惨な物語』が好きです(まだ半分くらいしか読んでいませんが)。

『玉蜀黍の髪の女』は暴走した科学者達によって様々な生物が交配させられた次元で、玉蜀黍の遺伝子が混ざった女性に主人公の女性が言った、「玉蜀黍は私の次元では昔、神聖な植物だったの。おいしくて、体によくて、神聖なものだわ」というような言葉がとても印象的でした。

ル=グウィンさんは人の優しさを印象的に書ける方で、『ゲド戦記』でもカラスノエンドウさんが親友であるゲドが死んだ(と思った)時に自分も一緒に死ぬ決意をしてゲドの元へ駆け寄るシーンがあるのですが、もう五年以上前に読んだのに、そのあまりのいい人ぶりが今でも忘れられません。

『四つの悲惨な物語』は文字通り悲惨なエピソードが四つ並んだ物語なので、実はあまり好きな感じではなかったのですが、このエピソードに出てくる図書館が凄く素敵で印象に残りました。

何と図書館の大半が野外にあって、アーケードで繋がっているんです。

石畳を敷き詰めていたり、起伏に富んでいたりする広い読書庭園はとても静かで、必ず泉があり、いつも水の音が聞こえているというだけでも素敵ですが、座り心地の良い席がさり気なく用意されていて、しかも芝生の上に足を投げ出して座れる座椅子まであるというサービスの良さが素晴らしいですね。

主人公の女性はこの次元に行くと必ず図書館に行くそうですが、これは確かに足を運びたくなるのもわかります。

この図書館がある次元以外にも「よくこんなこと思い付くなあ」と唸らざるを得ないような独特な設定がいろいろと出てきましたし、様々な能力やライフスタイルを持つ人々の考え方や信条が深い洞察を交えて描かれていて、とても読み応えがありました。

まだあと半分程読み残していますので、残りも楽しみに読ませて頂こうと思います。


PR