『QED 百人一首の呪』
ちなみにQEDというのは、数学などの証明で使われる「Q.E.D.」という言葉に由来するようです。
第9回メフィスト賞受賞作品なのですが、なかなか読み応えがあって良かったです。
とある会社の社長さんが殺害時に、何故か百人一首の札を握り締めていたという事件が起こるのですが、殺人事件の謎と百人一首の謎が絡み合い、面白かったですね。
これでもかと語られる百人一首の蘊蓄がちゃんと頭に残っているかと言われると、情報量が多過ぎてちょっとしか覚えていないのですが(すみません、大学受験で日本史選択だったのに、しかも国文卒なのに、文学史とかあまり得意ではないのです(笑))、とりあえず作者の方の教養が豊かなのはよくわかりました。
自分の知らないことを知るのは基本的に楽しいと思うので、蘊蓄がいっぱい出てくる小説を読むのは好きなのですが、私には絶対書けないなとも思います(少しは努力しろ自分)。
殺人事件の真相はかなり単純なもので、事件をややっこしくしていた原因が明らかになった時に、京極夏彦さんを思い出したのはきっと私だけではない筈……!
故人の生前の不可解な行いに関しては「いくら百人一首マニアの人でも、現代に生まれ育った人でああいう発想になるかなあ?」と首を傾げてしまうところもありましたが、百人一首の配置を一工夫するだけで全然別の物が見えてくるという視点は斬新で、とても興味深いものでした。
かなり分厚いので、なかなか気楽には手に取れないと思いますが、読み終わった時に「時間を返せ!」なんて思わずには済むと思うので、長さに尻込みしていらっしゃる方には是非思い切ってチャレンジしてみて頂きたいと思います。
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