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『パイロット・イン・コマンド』

内田幹樹さんの『パイロット・イン・コマンド』というミステリー小説を読みました(以下ネタバレを含みますので、ご注意下さい)。

発表は一九九九年だそうですが、今読んでも特に古さを感じさせないばかりか、サントリーミステリー大賞優秀作品賞受賞作だけあって、とても面白かったです。

飛行機という空飛ぶ密室を舞台にしたサスペンス色の強いミステリーなのですが、機長二人が操縦不能になってしまい、副操縦士がセスナを操縦できるCAさんと共に不穏な出来事が起こっているらしい飛行機を何とか無事に着陸させようとするというストーリーで、息をするのも忘れそうな程ハラハラしながら読みました。

もうタイトルも忘れてしまった洋画や「体は子供、頭脳は大人の名探偵」の映画でも見たパターンですが、こういう命懸けの状況ってやっぱりスリリングで引き込まれますね。

操縦を手伝うCAさんがプレッシャーに負けそうになって「もう無理」と泣き出すシーンを見て、「体は子供、頭脳は大人の名探偵」の映画で操縦席に座っていた女子高生は、やはりとんでもないメンタルの持ち主だったのだなあと思わずにはいられませんでした(笑)。

副操縦士の男性ですら墜落の悪夢を見るくらい、たくさんの人の命を預かるというのは相当なプレッシャーでしょうに、操縦なんてやったこともない十代の子が操縦を教えられてやってのけるとか、メンタルが鋼鉄過ぎて最早怖いです。

副操縦士とはいえ、本職の方が操縦できただけこの小説の方が状況としてはまだマシですが、機長だけでなくCAさんも飛行機が揺れた時に負傷して動けない人が出て、たった五人で一〇〇人以上の乗客の身を守らなくてはならないという状況の中、見事なまでのプロ意識を発揮して困難に対処するCAさん達の姿がとても印象的でした。

日本のCAさんって何故か女性ばかりですが、保安要員であることを考えたら、もっと男性を採用してもいいんじゃないかなと思わずにはいられません。

やっぱり男性の方が力もありますから、意識を失った人を動かしたりすることも女性より容易いでしょうしね。

ざっとは目を通すもののあまり熱心に読まない救命胴衣の使い方や緊急時のショックに備える姿勢のパンフレットの大切さを知ることができましたし、飛行機の備品が事故を教訓に改良されてきたというのも勉強になって、ただミステリーとして面白いだけではない良作だと思います。

少々古い作品ですが、未読の方は是非ご一読下さい。





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