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『さよならドビュッシー』

中山七里さんの『さよならドビュッシー』というミステリー小説を読みました(以下ネタバレがありますので、ご注意下さい)。

第8回「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作品ということで、流石の出来栄えでしたね。

犯人の一人には薄々気付いていたのですが、もう一人犯人がいるとは思いませんでしたし、その人が全く疑っていない人物だったので、謎解きのシーンでは本当にびっくりしました。

まんまとミスリードに引っ掛かる単純な人なもので、ミステリーは読んでいて驚かされることばかりで楽しいです(笑)。

この作品、単純にミステリーとしても面白いのですが、人間にとって音楽をするということがどれ程苦しく、恐ろしく、素晴らしいものなのかということが切々と書かれていて、ただひたむきに音楽に打ち込む人々の姿に胸を打たれました。

私は言葉を綴ることで日々を生きる力を得ている類の人間ですが、物語も音楽も人間が生命維持活動をする上で絶対不可欠なものではないのに今まで消えずに残っているのは、やっぱりそれが人間にとって必要なものだからなのでしょうね。

何か問題が解決する訳でもないですが、悲しみや苦しみをそっと癒やしてくれたり、自分の心に寄り添って力をくれたり、困難に負けそうな人間が歯を食い縛って生き続けるために、物語や音楽は欠かせないのだろうと思います。

結末は必ずしもハッピーエンドという訳ではありませんでしたが、綺麗に纏まっていて後味も悪くなかったですし、私は好きでしたね。





ちなみに私、『さよならドビュッシー』の続編に当たる『おやすみラフマニノフ』を先に読んでいたのですが(こちらも面白かったです)、何故か探偵役のピアニスト・岬洋介さんの声が声優さんの石田彰さん(『夏目友人帳』で名取周一さんを、懐かしいところでは『スレイヤーズ』シリーズでゼロス役などを演じていらっしゃった方です)で自然と脳内再生されて、何とも不思議な気持ちになりました。

小説を読んでいて頭の中で声優さんの声が聞こえるのはこれが初めてではなく、『されど罪人は竜と踊る』シリーズに出てきた壊れた人形の女の子の声が野中藍さん(『宇宙のステルヴィア』で主人公の片瀬志麻ちゃん役など)だった時にはかなりびっくりしたものですが、どういうキャラかもよくわかっていないのに、台詞の文字を追いながらその人の声が聞こえるって、よっぽどその人の声がぴたりとハマると思う何かを直感的に感じ取ったということなんですかね。

メディア展開して声優さんが声を当てているのを聞いていた場合はともかく、大抵文字を追うのに一生懸命になってしまうので「このキャラには誰々さんの声が合うなあ」なんてことは一々考えませんから、自発的に声優さんの声付きで読んだのはその二回だけです。

不思議と『さよならドビュッシー』では石田さんの声が脳内再生されませんでした。

本当に何なんですかね?

自分で自分がよくわからないという、実にどうでもいいことを書いてしまって恐縮です。




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