聖杯に願いを
現在『Fate/Zero』というアニメが放送中です。
この原作の小説が大変面白く、全巻コンプリートしていたりするのですが、アニメになるとまた違った面白さがありますね。
どんな願いでも叶えてくれる聖杯を巡って、7人の魔術師とその魔術師に召喚された英霊の皆さんが死闘を繰り広げるというストーリーだけあってバトルシーンが多いのですが、作画の皆さんが相当頑張っていらして劇場版並のクオリティです。
しかし大真面目に殺し合いをする話なのに、演出がおかしかったりするのは制作サイドの皆さんの遊び心なのでしょうか。
何故か訳もなくぐるぐる辺りを歩き回りながら、設定の説明や悪の算段をするあの姿が妙に印象的で忘れられません。
椅子に座ってひたすら長台詞を言うだけだと絵的に退屈だなーと思われたのかも知れませんが、最早あれはギャグの域に達しているような(笑)。
あれはあれとして面白いとは思いますけどね。
面白いと言えば征服王ことイスカンダルさんが契約者君に向かって、大真面目にズボンを要求するシーンは思わず吹き出しました(笑)。
原作でもあるシーンなのですが、原作では笑うことはなかったのに、大塚明夫さんの演技が付くともう笑うしかありません。
流石はプロ。
キャラクターの持ち味をよく引き出していて大変素晴らしかったです。
原作に忠実に作られているアニメなので、結末は知っていますが、今後とも放送を楽しみに待たせて頂こうと思います。
ところでこの『Fate/Zero』には衛宮切嗣(えみやきりつぐ)さんという、「恒久的世界平和の実現」を目的としてバトルロイヤルに参戦した人がいるのですが、それを知人に言ったら「完璧中二病じゃねえか!」とツッコんでいました(笑)。
確かに妻子持ちらしからぬ願いですが。
平和を願うのは悪いことではないと思いますし、戦争がなくならないからこそ平和への祈りは尊いものだと思いますが、恒久的世界平和はどう考えても無理です。
それが実現するとしたら、それは全ての人間を殺し尽くした時でしょう。
そのことに気付かないまま、高い志を抱いてあんな戦いに参加してしまったばかりに超が付く程悲惨な目に遭って全てを失ってしまったんですよねえ、切嗣さん。
ただ純粋に世界平和を望んでいた人が幸せになれないというのも何だかやり切れない話ですが、しかしこの世の中では仕方ないと言うか何と言うか……。
全ての人間をマインドコントロールでもすれば恒久的世界平和は実現されるかも知れませんが、それはそれで根本的に間違っていますし。
戦争を無くせない人間にできるのは、個別の戦争に対して早期の終結を促したり、難民の支援をしたりすることくらいなのでしょう。
切嗣さんももっと地に足を付けて、国連職員として平和活動に貢献したりすれば良かったのではと思いますが、どの道何らかの形で理想と現実のギャップに打ちのめされたでしょうね。
実は私の父もかつて国連機関で仕事をしていた人ですが、やはり「理想と現実は違った」ということもあり、喧嘩っ早かったこともあり、国連を飛び出しました。
しかし父は切嗣さんと違ってめげなかったのか、はたまた別の理想に邁進することにしたのか、多分現在進行形で世界に貢献していたりします。
しかしそのバイタリティーは娘達に全く遺伝していないのでした(笑)。
物事を粘り強く続ける方なので、根性はあると思いますが、しかしその根性を世界への貢献に使おうと思ったことがありません。
そんな能力もありませんし、そもそもそうした能力を身に付けることに関心がなかったので。
小説家になれたら世の中に貢献とまでは行かないまでも、何らかの問いかけに対して一つの答えを提示する程度のことはできるようになると思いますが、私にできるのはその程度なのでしょう。
そしてそれで十分だと、今の私は思っています。