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最弱にして最高のヒーロー

最近、ニコニコ愛想のいい動画で「アンパンマン×君の中の英雄」というMADを見ました。

2009年の『それいけ!アンパンマン だだんだんとふたごの星』なる映画の画像に、『機動戦士ガンダムAGE』のエンディングだった「君の中の英雄」の歌を合わせたものなのですが、これが凄く合っていて泣けるんですよ!(以下ネタバレありますので、ご注意下さい)
何度見てもついついホロリとくるので、思わず映画本編まで見てしまいました。

キララちゃんとキラリちゃんという双子の星の妖精さんがケンカをし、離れ離れになって地球に落ちてしまうところから物語が始まるのですが、キララちゃんはアンパンマンに助けられたものの、キラリちゃんの方はばいきんまんの所に落ちてギラリというダークな存在になり、只の機械だっただだんだん(ばいきんまんの作ったロボットです)に心が生まれます。

ギラリとだだんだんはキラリちゃんを執拗に狙うのですが、宇宙ではキラリちゃん達がいなくなったため、全ての世界を滅ぼす力を持つデビルスターが生まれ、世界中の皆が石にされていくのでした。

そんな中、キララちゃんは自分の思いをギラリに伝えてキラリちゃんに戻すことに成功し、二人は世界を救うためにだだんだんに乗って飛び立ちます。

そしてアンパンマンもまた、メロンパンナちゃんとクリームパンダ君以外の仲間を全て石にされ、もう新しい顔が作れない状況でも「あきらめるもんか!」とデビルスターに向かって行くのでした。

ボロボロになりながらもデビルスターを押し返そうとするだだんだん。

そこにアンパンマン渾身のスターライトアンパンチが炸裂し、見事デビルスターは破壊され、だだんだんと引き換えに世界は救われました、というお話なのですが、命や心などない筈のだだんだんが自分の存在を犠牲にして皆を助けようとする所から、もう涙が止まらない感じです。

そしてスターライトアンパンチを繰り出したアンパンマンの後ろ姿の格好良さが感動のピークですね。

「アンパンマンってこんなにカッコ良かったんだ!」と衝撃を受けて、思わずWikipediaさんでアンパンマンを検索したり、図書館から原作の絵本を借りてきたりしてしまいました(笑)。

アンパンマンはアニメは子供の頃よく見ていましたが、今まで原作の絵本を読んだことがなかったので、なかなか興味深かったです。

幼児向け絵本ということで、少ない枚数で話をまとめるために大抵出だしが唐突ですが、これはまあ仕方がないですよね。

アンパンマンの絵本には表紙の折り返しの所にいつもやなさせんのメッセージが書かれているのですが、かの有名な「アンパンマンのマーチ」に敢えて哲学的な詩を書かれたやなせさんらしく、いきなり「グリーン・フィンガー」なんて幼児が十中八九知らないであろう言葉が飛び出してきたりして、「流石!」と思いました。

1990年代くらいに出された本だと今と特に変わらない感じですが、昭和時代に刊行された本だとばいきんまんの一人称が「おれさま」ではなく「おれ」だったり、チーズが語尾に「わん」を付けて言葉を喋っていたり、アンパンマンの変遷がいろいろと発見できますね。

そして随所にツッコミどころも(笑)。

せっかく透明になれる薬を作ったのに、何故か全身包帯ぐるぐる巻きにして、「透明になった意味ねえ!」と突っ込まざるを得ないばいきんまんとか、ビー玉になってしまって体がないのにどうやってか顔を取り替えて元の姿に戻るアンパンマンとか、まあいろいろです。

アンパンマンと言うと、お腹を空かせている子供達に自分の顔を千切ってあげるシーンがお馴染みだったりしますが、3冊読んでもそういうシーンが全く出てこなかったのが意外でした。

まあ、アニメでも毎回やってる訳でもないですしね。

子供の頃から顔をあげる度に「顔が欠けて力が出ない」と言うアンパンマンを見て、「だったらあげなきゃいいのに」と思っていたものですが、Wikipediaさんでやなせたかしさんが何を意図してアンパンマンを描いたのかを読んで、敢えて顔をあげるのが大切なことなのだと気付きました。

たとえ自分が弱くなっても飢えた人を見捨てず、そして弱くなった自分では勝てない相手にも皆を守るために向かっていくアンパンマンの姿を通して、やなせさんは子供達に正義の何たるかを知って欲しかったんですね。

顔をあげるのが避けられないなら、せめて汚れや水濡れ対策に常時ヘルメットを装着すれば、巷で言われている「最弱のヒーロー」から「ちょっと弱いヒーロー」くらいに昇格できそうな気もしますが、「自分が弱いからこそ、弱い人の気持ちがわかる」のがアンパンマンだそうなので、彼はこれからも無策で頑張るのでしょう。

これだけでも子供向けのヒーローとは思えない深さを感じますが、「アンパンマンがばいきんまんを殺さないのは、ばいきんまんにもばいきんまんの正義があるかも知れないから」という設定まであって、「アンパンマン凄過ぎる!」と思わずにはいられませんでした。

この「大人が子供達へ向けて真摯にメッセージを発してる」感じが本当に素晴らしいですね。

『だだんだんとふたごの星』のアニメスタッフの皆さんも幼児向けアニメとは思えない程、アクションに力を入れて丁寧に作っておられて、子供達のために全力でいい物を作ろうという気概が伝わってくるようでした。

やなせさんは残念ながら既に亡くなられていますが、アニメスタッフの皆さんにはこれからも子供達に夢と希望をたくさん与えてあげて欲しいと思います。




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