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六兆年と一夜物語

最近西本紘奈さん作『六兆年と一夜物語』を読みました(以下ネタバレがありますのでご注意下さい)。

ニコニコ動画等でアップされている同名の歌が元ネタとなっているそうで、再生回数がダブルミリオンを叩き出す程の人気があるそうですが、全く知らなくて小説を読んだ後に歌を聞きました。

『鬼灯の冷徹』のパロディ動画にこの歌の替え歌をしたものがあったので、聞いてすぐに「ああ、あの歌か」とピンと来ましたが、オリジナルはああいう歌詞だったんですねえ。

歌の歌詞ですから文章としてはかなり短いですし、イメージの羅列に近いですが、そこから膨らませてあのページ数の小説にしたのは大分頑張ったなあと思いました。

誰にも必要とされていない少年と少女が出会い、互いに寄り添って生きていくことを決意する姿は大変美しくて泣けましたよ。

こういうのって大好物ですから、ティッシュ片手に凄く感情移入して読んでいたのですが、世界の命運を左右する程の重要人物である少年を都市は何故手元に置かずに外部の村に預けていたのかとか、少年を売り飛ばす気満々だった商人がどうして逃げる少年を棒立ちで眺めていたのかとか、ツッコミどころがいろいろあるところがちょっと勿体無かったです。

しかも売られそうになったところを逃げ出した後が打ち切りになった漫画のようなスピード展開な上、今まで見付からなかった箱を少年があっさり発見したりするというご都合主義だったりで、勿体無さに拍車が掛かってましたね。

荒廃した世界観で辺り一面砂漠ですから、何の装備もなく着の身着のまま逃げ出したら行き倒れになってしまうので(実際一度行き倒れて、人買いに売られそうになってましたし)、逃げ出した場所の近くに目的地があるのも仕方が無いとは思うのですが、ストーリーのテンポがいきなり変わってしまったので、どうしてもマイナス評価にならざるを得ませんでした。

オチもあまりいいとは言えなかったので(歌詞がああいう歌詞なので、仕方が無いとは思うのですが)、尻窄みになってしまった感が否めません。

基本的には書く力がある作家さんでしょうから、尚更勿体無かったですね。

人の成長だとか変化だとかを綴った詞ではない上に締めがああなので、そもそも小説にするにはあまり向いていない歌だったのが一番の問題だった気がしますが、『六兆年と一夜物語』がお好きな方は一読してみるのもいいように思います。




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