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『聖なる黒夜』

柴田よしきさんの『聖なる黒夜』というミステリー小説を読みました(以下ネタバレありますので、ご注意下さい)。

ハードカバーで六百枚を超える(しかも二段組)かなり長いストーリーで、内容がとにかく暗くて重く、読んでいてとても疲れました(笑)。

韮崎さんという、とある組の大幹部の男性の他殺体が発見され、警察庁捜査一課の麻生さんというおじさんが事件解決のために関係者の過去を調べていく内、自身の過去や知りたくなかった事実まで暴き出されていくのですが、奥さんが自分の元を去った真相や現在交際していた女性の正体が明らかになるにつれて、読んでるこっちが人間不信になりそうになりましたよ、ええ。

あそこまで周囲の人に裏切られてると、もっと取り乱してもおかしくないと思うのですが、麻生さんってメンタル頑丈ですね。

麻生さんサイドだけでも読んでてしんどくなる感じでしたが、韮崎さんの愛人の一人である山内さんと韮崎さんとの愛と憎しみが入り交じる複雑な人間関係も相当に疲れる感じで、読み進めるのが辛くなってしまう程でした。

好きな方はああいうややっこしい関係を楽しんで読めるのでしょうが、私は多少複雑なところがあっても感情のベクトルが愛情に向いている優しい関係が好きなので、ああも強い感情を愛と憎しみの両方に向けられると、読んでいて苦しくなってきてしまうんですよね……。

ここまで駄目だとは自覚していませんでした。

読むのが駄目だと、やっぱり書くのも駄目ですかね。

愛憎入り交じる関係は今まで書いたことがないので、書いたら新しい地平が開けるかも知れないと今思ったのですが、書き始めたところであっさりギブアップしそうな気もします。





地道な捜査で一つ一つ事実を明らかにして、犯人に迫っていく謎解きの部分は面白く読めたのですが、人間関係の重苦しさのせいでどうしても再読したいとは思えませんでした。

「この人が犯人じゃないといいな」と思っていた人が犯人だったので、犯人がわかってもカタルシスを感じられないどころか、絶望的な気分になりましたしね……(涙)。

多分この濃密でドロドロとした人間関係こそがこの作家さんの持ち味なのでしょうが、もう少し舌に軽い感じでないと私には胃もたれしてしまうようです。



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