『夏目友人帳 陸』
妖達の大切な名前が書かれた友人帳を受け継いだ夏目君が、妖達に名前を返したり、妖絡みのトラブルに巻き込まれたりしながら、少しずつ人や妖との絆を作っていく様を描いた物語なのですが、子供になってしまった夏目君の何気ない一言にほろりときたり、妖さん達の師弟愛に涙したり、原作を読んで話の筋を知っていても感動する安定の面白さで流石です。
続編もなく消えていくアニメも多い中、第六期まで来られたのは本当に凄いと思います。
長い作品なので、流石に全てのエピソードがアニメ化されている訳ではないものの、適度にエピソードを拾いながら原作を追いかけている感じなので、ここまで来たら物語の最後までアニメ化して欲しいところですね。
原作の雰囲気にマッチした美しい音楽や、原作以上に綺麗な絵や、声優さん達の心温まる演技が本当に素晴らしいので。
舞台は現代日本ですが、携帯電話やスマートフォンやパソコンが作中に登場することはなく、そうしたものに煩わされることのないゆったりとした人と人との関係、人と妖達との関係、妖と妖との関係がとにかく美しくて切なくて、愛おしいです。
人間しか登場しない世界観では絶対に描けない物語ですね。
他作品だと人外のキャラクターが登場する場合でも、中身が人間と大差ないことが多かったりしますが、『夏目友人帳』の場合は人間でも親しみ易い性格の人もいれば、人間とは格が違い過ぎる感じの尊さ全開の人もいるものの、基本的に人に見えない――気付いてもらえない存在なので、ちょっとした瞬間にふと触れ合った人のことをいつまでも大切に思っていたりするのが本当に切ないです。
この作品に出会えたおかげで、ファンタジーって本来こういう人間だけでは描き切れないものを書くためにあるんじゃないかなと思うようになりました。
原作は少女漫画ですが、大人は勿論子供でも十分楽しめる、良質な児童文学のような作品なので、まだ見たことがないという方には是非見て頂きたいと思います。
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