『化学探偵Mr.キュリー』
喜多喜久さんの『科学探偵Mr.キュリー』というミステリー小説を読みました(以下ネタバレがありますので、ご注意下さい)。
母方のお祖父さんがフランス人で、苗字がキュリー(でもあのキュリー夫人の血縁という訳ではないらしいです)ということにちなんで、『Mr.キュリー』と呼ばれている沖野さんという准教授と、とある大学の庶務課に勤め始めた七瀬さんという好奇心旺盛な女性が身の回りの謎を解いていくミステリーで、なかなか面白いですね。
タイトルに『化学探偵』とあるだけあって、化学の知識を活用して謎を解くので、文系人間の私には沖野さんの説明があまり理解できなかったりしますけど(笑)。
著者紹介によると、作者の喜多さんは東京大学大学院薬学系研究科修士課程を修了後、大手製薬会社の研究員として勤務されているそうなので、納得の設定ではあります。
かなり専門性の高い知識が真相の鍵を握っていたりしますから、知識がない人に謎が解けないのはともかくとしても、各話のタイトルが書かれているページでネタバレしていたりするのは、ちょっとどうかと思わないでもないですが、自分の知らない知識を知ることを楽しめる人なら興味深く読めると思いますね。
タイトルからもっと固い文章かと思っていたのですが、意外と砕けた感じの読み易い文章でしたし、個人的には七瀬さんの仕事を楽しもうとする前向きなキャラが結構好きでした。
ゲストのキャラがお馬鹿キャラだったり、ちょっと独特なキャラだったりすることも手伝って、全体的にコミカルなエピソードが多くて、するすると読めましたよ。
最後のエピソードだけちょっと毛色が違って謎解き要素はほとんどなく、化学の知識でトラブルを解決する感じでしたが、個人的には「え!? そんなことができるの!?」と結構びっくりする方法だったので、あれはあれとしてなかなか楽しめました。
思い返せば伏線は張られていましたが、オチも予想外でしたし。
化学に詳しい方なら、ネタばらしの前に真相に辿り着くことも可能だと思うので、腕試し的に読んでみるのも面白いのではと思います。