『魔法使いの嫁』
原作はヤマザキコレさんの漫画で、現代のイギリスを舞台にしたファンタジー物なのですが、魔法使いの素質があるチセちゃんという不幸な女の子がエリアスという異形の魔法使いに弟子兼嫁として買われ、いろいろな人達と出会う中で少しずつ変わって行くという物語で、なかなか面白いです。
死んだらすぐに岩や樹木になり、世界の一部になって次の命を育んでいくその様は、少し切なくはあっても惨たらしいものではなく、木になったドラゴンを見て「凄い凄い!」と喜んでいた子供達の姿から、「ドラゴンにとって仲間の死は別れではないんだな」ということがよく伝わってきましたね。
もう一緒に空を飛んだり、会話したりすることはできなくなっても、世界に還ってずっと一緒にいてくれるから、決して寂しくはないのでしょう。
人間とは違う種族なので、人間とは異なる死生観を持っているのも納得ですが、あまりそういうところを描く作家さんはいない気がするので、なかなか新鮮でした。
ドラゴンだけでなく妖精も人間を異界に誘いこもうとしたりと、日本ではあまり見ない描かれ方をしているので、日本式のスタンダードな西洋ファンタジーとは一味違っているところもいいですね。
魔法使いも人助けをしてくれる人がいる一方、人を破滅させたりする残酷な人がいたり、必ずしもいい存在ではないようで、エリアスさんを「酷い奴だ」と言う人もいたりしますが、それが事実だとしてもチセちゃんだけには優しい人であって欲しいなと思います。
誰からも必要とされずに生きてきて、やっと安住の地を見付けたと思ったのに、自分を側に置いてくれた人が自分に害を為す人だったりしたら、チセちゃんがあまりにも不憫過ぎるので(涙)。
まだあまり表情を変えることのない彼女が、いつか心から笑えるようになって、人生を心底楽しめるようになることを祈っています。
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