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『七つの会議』

先日、池井戸潤さん原作の『七つの会議』の映画を観て来ました(以下ネタバレありますので、ご注意下さい)。

池井戸さんの小説は『ルーズヴェルト・ゲーム』くらいしか読んだことがないのですが、池井戸さん原作の『下町ロケット』のドラマが面白かったですし、何より主演の野村萬斎さんのファンなので、「これは観に行かないと!」と思いつつ、インフルエンザの疑い(検査の結果陰性でした)で寝込んだりしていて、すっかり遅くなってしまいました。

とある電気メーカーに勤める八角(やすみ)さん(通称はっかくさん)というぐうたらなサラリーマンに風当たりの強かった人や彼のことを調べていた人達が余所に飛ばされるという不可解な人事や、取引先の変更に疑問を抱いた人達がはっかくさんのことを調べていく中で、思わぬ真相が明らかになるというミステリー仕立ての物語なのですが、とても面白かったです。

ネタとしてはよくある話と言うか、ちょくちょくニュースになるような題材なのですが、真相が明らかになるにつれてはっかくさんが只の怠け者や不正をするような人ではなく、ひどく真っ直ぐな人だということもわかって、とても見応えがありました。

事実が明らかになるにつれて展開が二転三転しますから、単純にミステリーとして見ても面白く、完全にミスリードに引っ掛かって「黒幕はこの人だったんだ!」と衝撃を受けましたね。

はっかくさんが取引先を元々取引のあった会社に戻したことが明らかになった時点で、現在の取引先の会社の技術不足を疑ってはいましたが、思っていたよりずっとスケールの大きい話でした。

池井戸さんのサラリーマン物の真骨頂である「どんな困難を前にしても、決してあきらめずに強大な敵に戦いを挑む」という展開が今作でもあるのですが、いつもぐうたらなはっかくさんがかつて不正を見逃したことを悔いて、「俺はもう逃げない」と真実を明らかにするために戦う姿がとてもかっこ良かったです。

いつも寝てばっかりいても、やる時にはやるというギャップがいいですね。

ただ一つ、はっかくさんが「強引なセールスが原因でお客さんを死に追いやってしまった時に『こんな商売をしたらいけない』と思って、それ以降強引なセールスはやめた」と言って毎月亡くなったお客さんのお墓参りまでしていた割に、同じ会社に居座り続けていたことは引っ掛かりましたが、別れた奥さんに引き取られた娘さんにかなり高額の養育費を支払っていたようなので、娘さんのためにあの会社に残ってたんですかねえ?

結構大きな会社のようなので、それなりにいいお給料をもらっていそうですし。

自分はボロアパートに住んでも、娘さんには不自由な暮らしをさせたくなかったのかも知れません。

最後の戦いに挑む前、奥さんを呼び出して「もしかしたら、職を失うかも知れない。でも養育費はちゃんと払う。すぐに新しい仕事を探すし、無理ならバイトして払うから」というようなことも言っていましたし。

大事な戦いの前に会いたくなっていたところを見ると、娘さんだけでなく、奥さんのこともまだ愛してるんでしょうし、「もう再婚しちゃいなよ!」と思ったりもしましたが、なかなかそう簡単には行きませんよね……。

奥さんもはっかくさんのいいところをよくわかっている感じでしたし、もう一度やり直すチャンスはありそうな気もするのですが、結局そんな展開にはならず、ラストシーンで「会議が始まりますよ」と呼びに来られて「昼寝の時間だー」と今までと全然変わらない彼らしい発言が出た時、このまま何も変わらないのもこの人らしくていいのかも知れないなと思いました。

ぐうたらな彼が再び立ち上がらずに済むことを、ただただ祈るばかりです。





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