『モモ』
最初は「モモが聞き上手で、誰でもモモと話している内に自分がすべきことに気付く」という設定の開示や登場人物紹介などが延々と書かれるばかりで、なかなか灰色の男達が出て来ず、「話が進まないなあ」とちょっとじれったく思ったりもしたのですが、全部読んでみたら「全部書く必要があることだったんだな」と納得しましたし。
一九七三年の作品ということで、今から四十年以上も前に書かれた訳ですが、灰色の男達の口車に乘せられて大切な物を見失い、時間に追われて苦しみながら生きる人々の姿は現代にも通じるものがあり、いろいろと考えさせられました。
真っ直ぐに友人を愛し、穏やかに美しく生きるモモの姿も素敵でしたね。
やがて灰色の男達に脅威の存在と見做され、その策略によってたくさんの友達を失ったモモは、友達を取り戻すために一匹の亀をお供に灰色の男達に立ち向かうのですが、大人でも一人で大勢に立ち向かうなんて怖いことなのに、まだ子供の身で大勢の大人に立ち向かうなんて、どれ程心細かったでしょうか。
それでもモモが勇敢に男達に挑み、無事に友達とその時間を取り戻した時には本当に良かったと思えて、思わず泣いてしまいました。
美しく幸せに生きるためのヒントが得られる、とても良い作品だと思います。
これからも末永く子供達に読み継がれて欲しい一冊でした。
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