黒い家
以前貴志さんが第3回日本ホラー小説大賞佳作に選ばれた『十三番面の人格ISOLA』は読みましたが、正直ラスト以外全く怖くなかったので(それも夜眠れなくなるようなレベルではなく、ちょっと怖かったという程度)、第4回日本ホラー小説大賞を受賞したという今作はかなり期待を込めて読みました。
流石大賞受賞作だけあって、こちらの方が怖かったです。
襖を開けてくれと言われた主人公が、言われるままに襖を開けたら死体がぶら下がっていたのはインパクト抜群でした。
他は生首が登場しようが、主人公が殺人鬼に追い回されようが、全然怖くなかったのですが、多分それは私が人が凄惨な死に方をしたりするバトル物のライトノベルや漫画を見慣れているからで、免疫のない人が読めばかなり怖いのだろうと思います。
今まで読んだ中で一番怖かったのが竜騎士07さんの『ひぐらしのなく頃に』で、長閑な日常が恐ろしい物に変貌していく恐怖にビビりまくって膝の震えが止まらなくなりながらも、それでも続きが気になって読破したものですが、あれを超える恐怖にはなかなか出会えないものですね。
まあ、『ひぐらしのなく頃に』は事件の真相がトンデモ系で、物凄くがっかりしたのですが(笑)。
『黒い家』は『ひぐらし』程ひどくはないにしろ、真相が簡単に推測できたので、いつまで経っても最初の容疑者を疑っている主人公が何だか頭が悪い感じになってしまっていて、少し勿体無かったように思います。
主人公が真犯人を疑いたくない心理もちゃんと書かれてはいたので、全く納得できないという程でもないのですが、「もっと早くに気付こうよ。あの時のあの台詞を聞いた時点で!」と思った読者は少なくないのではないでしょうか。
しかも身辺に危険が及んでいるというのに、夜遅くに買い物に出掛けるとか、主人公君危機感なさ過ぎだと思うのですが。
主人公が危険な目に遭わないと怖くならないので、主人公がある程度馬鹿な真似をするのは仕方がないでしょうが、「うわー、死亡フラグだー。主人公だから死なないだろうけど」と思いながら読み進めていたら、シリアルキラーの自宅への襲撃を外出によって回避するという形で死亡フラグをへし折ってました。
てっきりシリアルキラーが暗がりから主人公に襲いかかって来るものだと思っていたら、意外な死亡フラグ回避でした。
しかし、いろいろあって結局シリアルキラーと対決することになっても、唯一の武器である消火器を忘れて移動してしまったりとツッコミ所を忘れないところが流石ホラーですね。
ホラー小説があまり怖いと思えない一因がこの辺にあるような気も……。
逆に言うと、主人公が極めて合理的な行動を取っているのに、それでもどんどん追い詰められていくホラー小説があったらとんでもなく怖いのではと思いますが、残念ながら今のところ出会えていないので、いつか出会ってみたいです。
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