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『虎よ、虎よ!』

最近アルフレッド・ベスター氏の『虎よ、虎よ!』というSF小説を読みました。

発表が一九五六年ということで、結構古い作品なのですが、『岩窟王』のアニメが初めこの作品を原作を元にした作品になる予定だったと知ってから、いつか読もうと思っていたんですよね。

外国のSF作品はほとんど読んだことがなかったので、どういう評価の作品なのか知らなかったのですが、WikipediaさんによるとアメリカではベストSFとして知られているらしいです。


人類がジョウントというテレポート能力を持つようになって、今までになかった新しい問題に直面していたり、治安が悪くなっていたりするといういかにもSFっぽい世界観で、なかなか興味深く読めましたが、キャラがちょっと……。

主人公、ちょっと心が狭すぎや過ぎませんかね(笑)。

宇宙を漂流していて、たまたま近くを通った宇宙船に見捨てられたら恨みに思うのはわかりますが、結果的には助かった訳ですから、復讐まで企まなくてもいいんじゃないかなあと。

何でもベスター氏は『モンテ・クリスト伯』のような復讐譚が書きたかったそうですが、あれは確か主人公に落ち度がないのに陥れられて相当に理不尽な目に遭わされるストーリーなので、モンテ・クリスト伯が何をやっても納得と言うか、読んでいて「ここまでやるか」と思ったりはしなかった気がするのですが、『虎よ、虎よ!』の場合はただスルーされただけなので、どうにも復讐の理由に共感できなかったです。

キャラに共感できないと言えば、主人公と一緒に逃げてくれた女性も「主人公が好き」と言っていたかと思えば「憎んでる」と言い出すような感じで、何を考えてるんだかよくわからなかったですね。

愛憎入り混じってる感じだとは思うのですが、舌の根も乾かない内にころころ言ってることが変わるので、重みがないと言うか、キャラが薄っぺらくなってしまっている感じがしました。

他のキャラもあまり生きている感じがしなくて、世界観は面白いのに何だか勿体なかったですね。

訳の問題もあるのかも知れませんが。

オチは嫌いではなかったですが、大きな問題を放り投げたまま終わってしまったので、消化不良な感じでしたし、個人的には『岩窟王』の製作者の皆さんが『虎よ、虎よ!』ではなく『モンテ・クリスト伯』をアニメ化したのは正解だったように思います。

あれだけの脚本が書けるなら、『虎よ、虎よ!』を余裕で原作以上の名作にできそうな気もしますけどね。




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