忍者ブログ

『異世界食堂』

最近、『異世界食堂』というアニメがお気に入りで、毎週楽しみに見ています。

犬塚惇平さんが「小説家になろう」さんのサイトで公開されていた小説が原作なのですが、「小説家になろう」さんで人気の主人公がチート能力で無双したり、異世界転生して冒険したりする作風とは一線を画す、ほのぼのグルメファンタジーで、なかなか面白いですね。


一週間に一度、土曜日にだけ異世界と扉が繋がる「洋食のねこや」という食堂の店主さんとウェイトレスさん、お客さんが織りなす群像劇なのですが、異世界物ですから客層がお姫様から明らかに人外のリザードマンさんまでと幅広く、お店にやってくる理由も「たまたま扉を見付けた」「家族や知人の紹介」といったように人それぞれですし、一話ごとに主人公が変わるので飽きません。

特に事件が起こる訳でもなく、目指すべき目標がある訳でもなく、ただ毎回お客さんがお店に来て料理を食べて去っていくだけなのですが、店主さんの人柄が素晴らしいこともあって、なかなか味わい深い物語になっていると思います。

この店主さん、凄く優しい人で、働き口をなくして困っていた女の子を雇ってあげたり、その子が余所でちゃんとした仕事を見付けられた時には「休息室に置いてあるクッキー、いつも遠慮してあまり食べてないみたいだから」と女の子が好きなクッキーを就職祝いにプレゼントしてあげたりで、その優しさに和むんですよね。

お客さんがお金を持ってない時にはサービスしてくれたり、ツケにしておいてくれたりもするのですが、個人的にはエビフライのお客さんの回が印象深かったです。

軍務の最中、敵から逃げる間に一文無しになってしまった軍人さんがねこやさんへの扉を見付け、「食べ物を供出しろ!」と店主さんに凄むのですが、出て来たエビフライのあまりの美味しさにタダで食べるのが申し訳なくなってしまったらしく、店主さんがツケでいいと言っているのに「金がないから、これを代わりに預かっておいてくれ!」と自分の剣を強引に預けて去って行く(そしてその支払いも兼ねてまたねこやさんに行く)というエピソードなのですが、軍人さん役の杉田智和さんの真面目なのにどこかユーモラスな演技もあって、思わずくすりと笑ってしまう感じでした。

私はもういい年なので、「小説家になろう」さんから書籍化された作品って、アニメをそれなりに楽しんで見られてもなかなか敢えて原作を読もうという気にはなれないのですが、この作品はアニメが最終回を迎えたら原作を読んでみたいなと思えましたね(ネタバレなしでアニメを楽しみたいので、あくまでアニメを最後まで見てからですが)。

近年大人向けを打ち出したライトノベルレーベルや新人賞がちらほら出て来てきたくらいなので、大人でも楽しんで読めるライトノベルってそれ程多くないと思いますが、この作品は数少ない一作なのかも知れません。

まあ、アニメと原作が別物なんてパターンもありますし、ライトノベルは作品によっては結構な悪文だったりするようなので小説として読んだ時に面白いかどうかはまた別問題の可能性もありますが(私は今までそこまで酷い悪文の作品に出会ったことはないですけどね)、少なくともアニメは楽しめましたというお話でした。

PR