『東京バンドワゴン』
東京の下町で「東京バンドワゴン」という古本屋さんとカフェを営む堀田家の皆さんが、日常の中のいろいろな謎を解いていく物語なのですが、毎回下町らしい人情溢れるほのぼの展開で、「こういうの、凄くいいなあ。好きだなあ」と思いました。
四季の移り変わりが丁寧に書かれているところも、四季がはっきりしている日本の良さが感じられて好印象でしたし。
(多分)第一話に出て来た昔の因縁や「あの人の愛人って誰?」といった、一見本筋と関係ない謎も、ちゃんと物語が進む中で解き明かされていたので、読後感も良かったです。
堀田家の皆さんは大家族な上に、ご近所さんやお店の常連さんなども登場するので、登場人物がかなり多いのですが、それぞれにキャラが立っていたおかげで、すぐに名前が覚えられなくても読んでいて混乱せず、さくさく読み進められたところも流石でしたね。
語り手が既に亡くなっているおばあちゃんのサチさん(つまりは幽霊)なのですが、幽霊が語り手というのは斬新でしたし、おばあさんらしい優しい語り口もこの作品にとても合っていて、作品をより魅力的にしていたと思います。
個人的には、我南人(がなと)さんというロックンローラー(作中だと「伝説のロックンローラー」と言われていました)のおじいちゃんが一番好きでした。
余所に愛人作って、その愛人との間にできた子供を奥さんに育てさせたのはどうかと思いますが、家を飛び出して行ったお孫さんの居場所にちゃんと見当が付いていて迎えに行ってあげたり、昔捨てた娘に父親だと名乗れずにいる人のために一肌脱いであげたりと、ちゃらんぽらんなようでいて意外と人のことをよく見ていますし、思いやりのあるところがいいですね。
続編も何冊も出ているようですし、その内続編も読んでみようと思います。
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