『墓守りのレオ』
児童文学ではありますが、大人でも十分楽しめる物語で面白かったです。
タイトルに出てくるレオ君という墓守りの少年は実は主人公ではなく、女の子・レオ君の飼い犬・殺人鬼の視点で描かれた三つの短編においてとても重要な役回りで登場するのですが、とても印象的な少年で好みでした(笑)。
普通の人には見えない幽霊が見え、コンタクトが取れるという能力の持ち主で、その能力を使って死者の無念を晴らしたり、人の罪を暴いたりするという、取り立てて奇抜なストーリーではないのですが、「幽霊は自分が死んだと自覚した時でないと天に昇ることができず、その後はずっとこの世を彷徨い続ける」という設定は目新しくて良かったです。
幽霊になってしまった大切な人にこれからもずっと側にいて欲しいと思っても、そこで引き留めたら大切な人をずっとこの世に彷徨わせ、苦しめ続けることになってしまうため、どれ程辛くても送り出してあげなければならないところが泣けました。
死ぬ時って必ずしも大切な人ときちんとお別れできる訳ではないですし、置いて行く方も置いて行かれる方もなかなか別れを受け入れることができなかったりするものだと思いますが、お互いに納得した上で別れを受け入れ、残された人がこれからも死者のことを想いながら生きていく姿がとても美しかったです。
他にも人間程長くは生きられないことを知りつつも、一日でも長くレオ君の側にいてあげたいと思っている飼い犬君の優しさにほんわかしたり、自分が殺した家族が自分を愛してくれていたことを知って自らの罪を悔い、苦しみながら刑の執行を待っている殺人鬼の姿に人を裁くことの何たるかを考えさせられたり、「これは是非子供達に読んで欲しい本だな」と思いました。
児童文学のクオリティも、お子様ランチのようなお手軽なものから大人が読んでも感銘を受ける良作まで様々ですが、この本は間違いなく後者なので、大人の方にもオススメしたいです。
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