特技 幽霊が見える
執筆中はあまり本を読まない(と言うか精神的に余裕がなくて読む気になれない)私ですが、原稿が大分仕上がってきたので、ちょこちょこ本を読んでいます。
最近神永学さんの『心霊探偵 八雲』を読んだのですが、申し訳ないことに第1話で何度も挫折しそうになりました(苦笑)。
どこかで見たような出だしな上にキャラクターもステレオタイプ、文章も悪文という程ではないにしろ素人さん臭い感じで、読むのがかなり辛かったです。
しかし結構有名なシリーズなので、その内もっと面白くなるのかも知れないという期待を持って読み進めることに。
第2話辺りになると大分文体に慣れてきたのか、そこまで辛いということはなく、後はすらすらっと読めましたね。
八雲さんの幽霊が見えてしまう苦悩とか、文章自体には心を動かされることなく軽く流しただけのですが、八雲さんの辛さをいろいろ想像して切ない気持ちになりました。
文章力が今一つ足りない感じなのが残念ですが、そこを想像力で補えば八雲さんも結構いいキャラかもと思います。
個人的には八雲さんの叔父さんである一心さんが一番のお気に入りですが。
八雲さんは片目が生まれつき赤く、その目で幽霊を見るのですが、その目のせいで随分迫害を受けてきて、一心さんは八雲さんの苦しみを知るためにわざわざ赤いカラーコンタクトレンズを片目に入れているという、なかなか見上げた根性の人なのですよ。
「父親不在で母親は自分を殺そうとして失敗し、そのまま行方知れず」というなかなか壮絶な身の上の八雲さんが、ひねくれながらもグレなかったのはきっと一心さんのおかげなのでしょうね。
八雲さんの苦しみは八雲さんにしかわからないものですが、自分と同じところに立って傷付いたり苦しんだりしてくれる人がいるというのは心強いことだと思うので。
とまあ一心さんは素敵な人なのですが、八雲さんとタッグを組んで事件を解決していく晴香ちゃんという女の子があまりに没個性的なので、何とも残念な感じが否めません。
これまでのところ、ミステリーとしての面白さはそれ程でもありませんし。
しかし一心さんの素敵さと八雲さんと因縁のある相手が気になったので、2巻も読んでみようかなという気になりました。
かの有名なハリーポッターなどはまあまあ面白いなと思いながらも2巻は読まなかったのですが、売上や発行部数はともかく、続きを読もうという気にさせたという点では『心霊探偵 八雲』の方が上でしたね。
作品自体に点数を付けるとしたら結構辛い点になると思いますが、たとえ一部にでも人の心を掴む魅力があるというのはやはり強みなのだなあと思います。