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最早忍者と言うより魔人

先日GyaO!さんで、『バジリスク ~甲賀忍法帖~』というアニメを全話見ました(以下、ネタバレを含むのでご注意下さい)。

朧さんと弦之助さんという伊賀と甲賀の跡取りさんが、結婚する筈だったのにそれぞれの手下と一緒に殺し合う羽目になってしまうという、ロミオとジュリエットを和風にして血腥くしたようなストーリーなのですが、仮にも「甲賀忍法帖」というサブタイトルが付いているのに、まともな忍者がほとんどいないというのはどういう訳なのでしょうか(笑)。

女性の黒髪で壁を豆腐のようにスパスパ切る人なんて序の口で、殺されても殺されても何事もなかったかのように生き返る人や、「忍法じゃない」と堂々と明言される技を使う人までいる始末。

作中でも「彼奴等は忍びと言うより魔人だ」というような台詞がありましたが、正にそんな感じですね。

最早人間かどうかすら疑わしいレベルです(笑)。

予備知識がほとんどないまま見たので、あまりのトンデモ忍者ぶりに初めは「えええええ!?」と思いましたが、それぞれの能力を活かして敵を罠に嵌めたり、裏をかいたりして敵を倒していくのはなかなか面白かったです。

最終的に誰も生き残れないという救いのない話ですが、意外と後味は悪くないですし。

弦之助さんが朧さんの亡き骸を前にした時、モノローグは特になく、「私達の魂は元は一つだったのではないでしょうか」という朧さんとの会話を思い出すという演出には思わずほろりときました。

千の言葉を並べるよりも、朧さんへの愛や失ってしまった悲しみがすっと伝わってきたように思います。

ちなみに『ロミオとジュリエット』では、ジュリエットの亡き骸(とロミオが思っているだけで実は死んでないのですが)を前にしたロミオが「よく人は死ぬ直前に、急に朗らかになるものだが」に始まっていろいろと語ってくれているのですが、全く泣けませんでしたね(笑)。

千とは行かずとも、長々と言葉を並べればそれでいいというものでもないというお手本のようですが、あれは舞台で演じる前提で書かれたものですから、実際上手い役者さんが舞台で演じているのを見れば、胸に迫るものがあったりするのかも知れません。

優れた役者さんのパワーは凄いですしね。

 

 

ところでこの話、10対10の戦いなので、登場人物を把握するのが結構大変で、名前を覚えられないまま死んでしまったキャラクターも多いのですが、個人的には一番最初に死んでしまうお幻(げん)さんというおばあさんがお気に入りでした。

先程、登場する伊賀と甲賀の忍者の内、まともな忍者はほとんどいないと書きましたが、その中で一、二を争うまともなくの一です(笑)。

不意打ちを食らって死んだかと思いきや、お年寄りらしからぬ生命力を発揮して不意打ちしてきた相手を殺して自分も力尽きるという、なかなか只物ではないおばあさんなのですが、いかにも漫画的な特殊能力を発揮したりするようなことはなかったので、多分ごく普通の忍だったのではないかと。

何だか妖怪染みた、ちょっと不気味な感じのするおばあさん(笑)なのですが、若い時はかなりの美人ですし(私は男でも女でも美人が好きです)、いろいろ妄想意欲を掻き立てられるところがいいですね。

お幻さんは伊賀の御頭さんをしている偉い人なのですが、若い時に甲賀の跡取り息子と恋仲になるも、伊賀と甲賀の争いによって結ばれることはなかったという悲しい過去を持つ人なので。

Wikipediaさんには朧さんというお孫さんがいると書かれていましたが、アニメでは誰とも結婚しないで跡目は一族の中から選んだという設定になっていて、「きっとずっと昔の恋人のことを想い続けてたんだろうな」と切ない気持ちにならずにはいられませんでした。

一度は恋人と戦う道を選んだものの、伊賀と甲賀の争いに終止符を打ちたいと思っているらしく、跡継ぎである朧さんを甲賀の跡取り息子と結婚させようとしたり、甲賀との因縁話が朧さんの耳に入らないように計らっていたりするところも、強くて優しい女性という感じで好感が持てます。

甲賀との派手なドンパチがあった際には裏切り者がいたことに気付いていた節もありましたし、聡明なところも素敵ですね。

おばあちゃんになっても髪形を気にしたりして、女心を忘れていないところも可愛いですし。

すごくいいキャラだなあと思うのですが、残念ながらこの人、バトルロイヤル開始後真っ先に死んじゃうんですよねえ……。

で、かつての恋人だったおじいちゃんと相討ちになるのですが、そのおじいちゃんも誰とも結婚しなかったそうなので、お互いに愛し合っていて、他の誰かに殺されるくらいなら自分が殺そうと思って、それを実行したように思えてなりません。

朧さんと弦之助さんがそれぞれ相手ではなく、自分を殺したのとは対照的ですが、あれも一つの愛の形だったのだろうなあと。

ロミオとジュリエットを軽く超える、壮絶な悲劇のカップルですが、せめてあの世では幸せになって欲しいと思います。




 

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